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2012
12,20
00:00
【少年ルーク】財業(中編)【カイ←ルク風味】
CATEGORY[φBrain - 物語]
■こちら■
の続きです
半年間も空けてしまいすみません
+++
数年前に仕込んだパズルがようやく動き始めた。軌道に乗ったヘルベルト・ミューラーが、ルーク・盤城・クロスフィールドから日本支部総責任者の地位を剥奪したのだ。事情を知らないビショップはヘルベルトに食い下がったが、このように仕向けたのは他でもない、ルーク自身だ。
「ルーク様。本部長の言いなりになってしまわれるのですか。それではあまりにも、」
「問題ない。彼があのまま続くと思うのかい? お前は彼の行動を全て記録してくれ」
「……かしこまりました」
自分を慕い、見解を異にする上司に真正面から刃向かおうとする側近を、有難い反面わずらわしくも感じながら、主人が更迭された不満を晴らすのに相応しい任務を与え、好機を窺った。
□
「ここを、こうして……、こちらを、……こうだ。そうすれば……、うん、このほうがいい」
自室の白いチェアに浅く腰掛け、満足げに微笑む。要職を離れ、現在は単にPOG構成員の一人に過ぎない16歳の白い少年、ルーク・盤城・クロスフィールドは、実に上機嫌だった。
ルークは条件を変え、何度もその地を訪れた。時には航空機の中から、時には大型特殊車両から身を乗り出し、時にはその足で実際に歩き回りながら、念入りに作業環境の情報を集めていく。
――相変わらず蒸し暑く、風はあまり強くない。その代わり、度重なる断層の移動により形成された、歪な円筒状の巨大な断崖の途中から、天候や時間帯に依らず勢いよく水が噴出している。……ならば懸垂させる形よりも、下から支えるほうが効率的だ。支点は三点がよいが、滝の周囲は避けたほうがよいだろう。最も強度の高く、かつ、最も半径を狭く取ることのできる安定した三箇所は……。その前に、地質と水質の分析だ。合金との相性によっては今後に影響を及ぼしかねない。そして、本当にこの地点を用いることが最良なのか……。
組織内にて非人間的な扱いを受けてきた経歴の持ち主にしては、徒に自然を痛めることを好まなかった。それは、理論上のパズルとのギャップの最も少ない形が美しいから、という理由の他に、「裏切る人間たち」への嫌悪感が含まれるからかもしれなかった。
「さぁ、お前たちも水分を補給してくれ。見積もり作業は中断だ」
ルークは施工班に休憩の指示を出すと、額から流れる汗を拭った。そして崖から少し離れた車両脇に設置されたウォータータンクから、グラスに飲料水を注ぐ。水の満たされた透明なグラスに唇を寄せ、ふう、とゆっくり息を吐いた。目の前の液体を冷ますその仕草は、側近の毎日淹れていた温かい紅茶を飲むときの癖だった。グラスの内壁を辿って吹き上げられた小さな風が、ルークの鼻筋をひんやりと撫でる。
「あはっ、涼しい。……水だもの。当然だよね」
総責任者の地位に就いていた頃のルークの隣には、側近が付いていることが多かった。しかし、日本支部総責任者の徹底的な監視を彼に任せている現在は、それがない。
――ヘルベルト・ミューラーが、僕の計画を促進すると見込んだのは、正しかったろうね。だって今、僕はこんなにも、自由なのだから……。
その日、ルークは自室のモニターに向かい、POG製のパズル製作用ソフトで歯車の調整を行っていた。一定の速度と重量を保つ水流を動力源とし、水車を介して巨大なチェーンを回転させることにより歯車に動きを伝える。歯車の噛ませる角度と直径を微調整し、最も負荷に強く、摩耗の少ない構造を算出するのだ。
デスクの上には、様々な形状の工具や金属パーツが散らばっていた。断面を半田でループ状に溶接された太めのワイヤー数本、半円状のカーブを描いたワイヤー十数本、少年の肘から指先ほどの長さのある、細い円筒が1本に、それを包むようにらせん状に巻かれた弾性のないワイヤーなどだ。さらに、手元にメモ用紙が置かれ、少年はしきりにモニターとデスクの上を見比べては、筆記具で何かを書き留めていた。
「2フィートほどと見込んで……、2×9=18フィート……、まずはこれで試してみるとしよう」
愉快げに小さく声を零すと、弧を描いたワイヤーのモーメントを吟味しながら、ニッパーを用いて最適な長さに切り落とした。デスクを傷から守るため、鋭利な先端は丸めた粘土で覆う。それらを幾重にも重ねて不完全な球を作り、最後に球の中心部を軸として円筒を包む螺旋に固定させた。各ワイヤーがそれぞれの歯車に対応し、一定の法則に従って回転する構造だ。
「これで、簡易モデルが完成だ。フフッ、理論上はこの骨格が最も美しい。けれど、」
――もう少しだけ、……見つめる時間が欲しいから。
選び抜かれた調和と不安定さを併せ持つその構造物を、無邪気に、けれども注意深く観察し、ペンで突いてワイヤーに印を付けていく。
嬉々として工作に取り組むその姿は、技術科の作業に没頭する高校生のそれと何ら変わりはなかった。その目的さえ、明らかにされることがなければ。
――二人きりで、楽しもうね。
□
プロファイリングの通り、権威主義かつ昇進の遅さに焦りを感じていたヘルベルトは「伯爵」の指示を鵜呑みにし、パズルマンシップを逸脱した行為を連発した。白い少年は特に驚くこともなく、側近の定期報告に確認の問いを投げかけた。
「姫川エレナは?」
「現時点で、ギヴァーとして彼女の行動に大きな問題は見られません。時間制限の解除を試みた件につきましては、念のため本部に報告しました。ただし、本部長の指示による出題のため、本部もやんわりと指導するに留めておいたようです」
返答する側近の顔を一瞥し、続きを促す。
「また、極東本部長が解除ボタンをロックした件につきましては、初めからそうするつもりだった、と見て間違いないでしょう」
「……パズルに事故は付き物なのに?」
「えぇ、その通りです」
元総責任者の少年は、大門カイトの実力を信頼しており、タイムアウトの可能性は極めて低いと見込んでいたため、初めから心配などしていなかった。ただし、日本支部に課せられた本来の使命はファイ・ブレイン大門カイトの育成と完成であり、上司からまともな説明を受けていない彼女にそのつもりがあったとは考えにくいが、死亡させてしまっては万事休すだ。不測の事態に備え、パズルを停止させソルヴァーを生かす仕掛けを施していた点については処罰の対象どころか、強く美しい出題者の心構えとして、ルークは高く評価したいと感じていた。
「ところで、先日、伯爵より大切な辞令を賜った」
「はい」
白い制服のポケットを探り、親指の爪よりも一回り大きい、暗く銀色に輝く徽章を掌に載せて見せる。長身の側近は、緊張した面持ちで目を細め、少年の掲げたものを確認できる位置までそっと腰を屈めた。
「これは……。おめでとうございます、ルーク様……!」
側近の青年は、一瞬、翡翠色の澄んだ瞳を大きく見開き、それからすぐに眉尻を下げ、泣き顔のような表情になる。
「ルーク様……、本当によかった……」
「だらしない顔をするな」
「申し訳ございません。……けれど、」
ルークを慕う割には、疑問を発すること――人によってはそれを口答えと解釈するのだろうが――を躊躇わないビショップの言葉を、珍しく遮ることなく、ルークはその瞳をじっと見つめた。
「何故、初めにそう仰らなかったのです。本日のご報告などよりもそちらの方が明らかに優先されます。フンガらを招集して、急いで会議を開きましょう。そして、本部長を直ちに、」
「ビショップ」
――お前が仕事熱心で本当に良かったよ。先日といっても、一昨年のことだけれどね。現在のお前にとっての最優先事項は、僕に指示された通り、ヘルベルトの監視と処分についてなのだろう?
少年はすらりと伸びた脚を優雅に組み直して頬杖を付き、ようやく口を開いた。
「焦る必要はない。次のパズルまで待つんだ」
「何故です、そのような悠長なことでは大門カイトの身にも危険が、」
「カイトなら大丈夫。……聞こえは悪いが、彼は現行犯で追放するのが、最も手間がかからない」
その翌週、ヘルベルトは案の定、問題を起こした。部下である姫川エレナのパズルに再び介入し、今度は小型の爆発物を解答者のフィールドに放ったのだ。パズルとは無関係の傷害を誘発する行為は、POG憲章に違反する。
「急ぎなさい。ここで確実に捕らえるのです。我らがルーク様を、再び頂点に」
「行くぞ!」
「かしこまりました」
「任せてくださいッス!」
幹部に加え数名の屈強な構成員を引き連れて、ビショップは、決して走ることもなければ息を荒げることもないが、彼にしては珍しいほどの早足で、総責任者室に向かった。その部屋の主には不正を働いている自覚がないのか、入室のロックすら掛けられていない無防備なセキュリティゲートを通過し、凛とした声を張り上げた。
「そこまでです!」
ルークは、あの日、伯爵から与えられた鈍色の徽章を胸に付け、「たった今」、ピタゴラス伯爵直属の管理官に任命されたかのように振る舞った。
「大門カイトの抹殺が、本部からの命令ではなかったのか?! 伯爵に会わせろ! ルーク!」
「……」
実際、連絡系統に細工を施され、2年ほど前からヘルベルトの端末にだけ、本部の他の構成員とは若干ずれた命令が伝達されていたのは事実だった。ただし、その内容は、まともな構成員、まして本部長レベルの人間が一目見れば、内容に不審な箇所が含まれることを理解するのは容易い。更に、同僚や部下たちとの連携が密ならば、すぐに気付けたはずの齟齬だった。
つまり、ヘルベルトはPOG構成員としての良識を持っておらず、人望が極めて薄かったため、「伯爵」からの連絡を信じつづけ、このような事態に至った。初めから本部長の器ではなかったのだ。
結果としてルークは今まで以上の信頼と権限を獲得し、ヘルベルトはPOGギヴァーとしての一切の権利を失った。一言で表現してしまえば、除名された。
先代のファイ・ブレイン達が神のパズルを解放した直後にこれを用いても誤りではなかったかもしれないが、あえてそうしなかった理由があった。
一つには、いくらファイ・ブレインとはいえ、全ての未来を詳細に確実に予測できるわけではないからだった。大門カイトの移籍までの2年間に、管理官の地位が覆されるような事態が発生しては無駄になってしまう。
また、もう一つ、POGにおいて崇拝の対象である腕輪の正統なる継承者であるとはいえ、当時14歳で幹部に就いたばかりの無名の少年がその座を獲得したところで、周囲から実際に信頼が得られるとはルークは考えなかったのだ。暫く無難に活動したのち、或る程度名の知れた、そしてなるべく直接の上司に近い人物の不正などを暴けば今後の作業が捗るだろうと見込んでの茶番だったが、今度こそ成功と解釈して構わないだろう。ルークは小さく胸を撫で降ろした。
□
「今日、カイトと、久しぶりに会ってきたんだ。彼は、変わってしまった」
その日の出来事をひとつひとつ思い出す。大門カイトと9年ぶりの再会を果たし、POGギヴァー・幼馴染のルークとしての役割を演じ終えた組織のNO.2は、目の前の男に静かな苛立ちをぶつけていた。思い出の教会から続く樹形図のパズルを解くよう、それとなく誘導したのだが、かつての幼馴染は危険を感じとり、拒絶の意を表したのだった。
対する男は、焦茶のベルベットの張られた椅子に腰かけていた。懐かしい音の羅列を識別すると、ゆっくりと顔を上げる。テーブルには大きな額縁ほどのサイズがある、60×60ピースのスライドパズルが置かれており、男の手によって、半分以上は完成されていた。
「でも、ジンのお陰で作戦は成功したよ。もとより、貴方のせいで、カイトも僕も、こんな目に遭っているのだけどね」
大門カイトは、この男を大変慕っていた。「出逢ったパズルを全て自由にしてやる」、幼い頃に彼とそう約束したことを思い出させると、カイトは反論をやめて黙り込み、結果的にパズルタイムを開始した。一緒にいる幼馴染の友人の誘いには乗らなかったのに、記憶の中の懐かしい男との約束は守ろうとした。この事実が、ミッションを成功させるためには有難い決め手となった反面、苛立ちを増幅させる要因となっていた。
白い少年の言葉の真意を理解しかねた――既に理解できるだけの脳の機能は生きていないかもしれないが――ジンは、解答する手を止め、首を傾げて、少年の頭のある辺りをぼんやりと見つめた。
「もちろん、僕のことは覚えていてくれたよ。嬉しそうに抱きしめて、笑ってくれた。パズルでは、気絶した僕のことを心配して、名前を呼んで、抱き起こしてくれた。でもね、……、」
ルークは瞳を伏せ、胸に両手を重ねながら、言葉を紡いだ。しかし、少しすると、パチリ、パチリと、幽かではあるが規則的な音が聞こえはじめる。視線を上向けると、痩せて骨ばった手がテーブルの上を滑って、細かなパズルのピースをはじいているのだった。ルークは話を区切り、溜息を吐いた。
この部屋の主である「財」は、いつもこうだった。食事を与え、辛抱強く世話を続けた結果、日常の起居や食事、衛生に関する動作は自力で問題なく行えるまでに回復した。しかし、人間の挙動として充分とは到底言いがたい状況は相変わらずだった。動作は緩慢であるくせに、常にパズルを解いていないと、落ち着いて座っていられない。彼自身かカイトの名が呼ばれると視線を上げ、呼ばれなくなると興味をパズルに戻す。現実に話し掛けてくる「ルーク」の存在自体には、興味を示さない。そのため、話を聞かせるには、それ自体に意味はなくとも、話の途中で彼らの名前を挟む必要があった。
「でもね、ジン。カイトがとるべき行動は、もっと違うものだったんだ」
再び顔をこちらに向け、耳を傾けているように見える青年に、ルークはうっすらと湧き上がった感情を並べ立てた。
「カイトは僕との思い出を語る度に、ジンのことを気に掛けていた。カイトと僕が二人きりで過ごすのでは、まるで不完全であるかのようにね」
「……」
「ジンのせいだよ。カイトが今日、パズルで危険な目に遭ったのも、僕がカイトとずっと一緒に居られなかったのも、全部。ジンのせい」
今度はジンと向かい合う位置にいるルークのほうから、パズルのピースを完成に向けてスライドさせていった。
「ジンは、どうして、神のパズルに挑んだとき、子どもたちの……、僕たちのことを考えていたの。怒っていたの。ファイ・ブレインは、余計な感情を切り捨てて初めて到達できる存在なんだって、当然ジンは知っていたでしょう? 感情さえ制御できれば、ジンは伯爵よりも先に、神の書を手に入れられたかもしれなかったのに。今日のカイトも、同じだった。僕のことなど心配しなければ、怪我を負わなくても、すぐにクリアできたはずなんだ」
大門カイトは、階下で気絶する友人を助けることに気を取られたあまり、円盤状の巨大なのこぎりを避け損ね、正解のルートから逸れてしまった。目的意識を持って解答に臨む姿勢は大切だが、その情動によって注意散漫となり、解答に支障をきたすならば、そのような感情は抱いてはならない、無駄な物だ。
「どうして、POGを辞めたの。ジンが辞めずに残っていれば、カイトと僕は両親から、あるいは、お互いから、引き離されずに済んだんだ。ジンだって伯爵に勝てたかもしれなかったのに」
パチパチと、ジンが解答するよりも短い間隔で、鋭い音が鳴り響く。ファイ・ブレインの少年はスライドを続けた。少年の座る位置からでは天地が逆のままだったが、彼が腕輪の正統なる保有者である限り、何の問題もなかった。
「一番悪いのは、パズルを作った人間。でもね、ジン、パズルを正しく解けなかった人間にも、責任があると思わないかい? ソルヴァーとしての覚悟が、足りなかったんじゃないかな」
日差しの厳しい無人島に木霊した、先代一のソルヴァーの怒声を、白い少年は回想する。ジンは、伯爵の野望を食い止めたい、未来の子どもたちを助けたいと言っていなかったか。
「神の書の処分をしくじり、カイトを僕から奪った罪(ざい)は重い。だからジンには、この部屋に残って、最善かつ最悪の責任を負ってもらおう」
「ざい……」
ザイ。
反射的に男の口からこぼれ出て、繰り返された言葉。
その音の響きは、かつて天才ソルヴァーとしてPOGの期待を一身に背負った彼が、幾度となく解放していった存在と同一だった。
「心配は要らないよ。パズルなら、この部屋にいくらでもあるから。好きな時に、好きな物を、好きなだけ楽しむといい。……ジンは僕たちと同じく、黄金比に適う頭脳を持っている。だから、どんなに素晴らしい頭脳を以てしても、解き終えるにはそれに見合った時間が掛かるということを、ジン、貴方なら、知っているはずだよね」
まるでジンを威圧するかのような、甘えた口調で言い放った。返事の得られる見込みのない確認を取った後、小さく微笑んで、管理官を務める少年はこの「宝箱」からそっと抜け出していった。
――僕は、貴方を許さない。
潮風に吹かれながら、上機嫌で元来た道を戻っていく少年の姿を見た者は、誰もいなかった。
一方、テーブルに置かれているスライドパズルは既に、解放までにさほど時間が掛かりそうにない。しかし、突然解答が中断された様子を視界に入れた真方ジンは、しばらく指を動かさなかった。未完成の板面を凝視したまま、何かを思案している風にも、全ての思考を停止させてしまった風にも感じられた。
【To be continued....】
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