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2002 01,02 00:00 |
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帝ちゃんは年内に近所の父方の実家に泊まりました いとこも集まって年越しして、新年会をしたあとに母方の日天家に向かいます 「茉莉姉~!! 明けましておめでとうございます!!」祖父母と同居のひなが出迎えてくれました おじさんとおばさんにもご挨拶して、こちらでも新年会の始まりです 「今年も着物か」 ひなは祖父母を喜ばせるため、新年会には毎年和服を着るのです 今年は、例年よりも少し落ち着いた柄の橙色の小紋でした「来年から高校生になるって思ったら、自然にね」 中高一貫校なので受験はありませんが、あと一年と少し先のことを考える小さな従妹のことを、帝は立派に思います 「偉いな」スプレーでしっかり固められたひなの頭を撫でると、棒状の細い髪飾りがチリチリと微かな音を立てました 髪飾りも見慣れたものより小さいように思いました 「茉莉姉も着たらいいのに」「いや、俺はいい」いつものように洋服の帝は苦笑します 帝は赤、桃、橙など暖色系の色味が苦手でした 祖父母はやはり昔の人、祝いの席でも寒色系の着物を選ぶ帝のセンスに難色を示すことはよくわかっているのです 食事や片付けを済ませ、祖父母や叔父夫婦との話も落ち着くと、皆でかるたなどして遊びました 夕方になると、ひなの部屋にお邪魔して、学校や部活の話を聞いたりしました 部屋にはやはり、るなと一緒の七五三の写真が額縁に収められています ふたりとも、随分大きく美しく成長したものだ…「そういえば、家近いんだろ。もう挨拶に行ったのか?」 ひなは首を横に振りました「るなはお父様のお勤め先の手伝いで忙しくしてるから。いつも会えるのは松の内を過ぎるか、ギリギリくらいだよ」やはりそうなのか… 梵も同じようなことを言っていた、と帝は思い出したのでした 尋ねたことはないが、何の仕事なんだろうな +++ 梵ちゃんはまだ外が暗いうちに起床して、眠たい目をむにゃむにゃと擦りながら朱鷺色のワンピースに袖を通しました お化粧を済ませ、乳白の細く柔らかい髪を両耳の脇だけ少し残して垂らし、他をアップにまとめて毛先を内側に仕舞いこみました 仕上げに鶴の飾りのついた簪を挿し込んで完成です ミルクティー色のコートを羽織り、ワンピースと同じ色の、つま先の丸いハイヒールを履いて、荷物を持って玄関の門を閉じると、脇に黒い車が停まっています 後部座席に乗っているのは月天るな、運転手はるなの祖父でした 「蓮様、明けましておめでとうございます。どうぞお乗りください」 梵もご挨拶を済ませて乗り込みます るなも梵と同様に、お化粧をし、艶のある黒髪をアップにまとめて亀の簪を挿していました 黒いファーのついたロングコートを着ていますが、中の服は毎年同じ浅葱色のワンピースです 足元は水色のクールなハイヒール、梵もよく知っていました 「はぁ…、眠たい」「ですねぇ」伝統とはいえ、まったく馬鹿馬鹿しい…、梵は新年早々、パパへの文句を漏らしています 運転しながら、るなのおじいちゃんは苦笑しました「蓮様。個人の小さな会社が何代もというのは、努力だけでは続かないことです」 月天家は代々、梵天家に仕えてきました このおじいちゃんも、隠居した蓮の祖父母の代の秘書でした 蓮のおじいちゃんが子どもの頃からずっと一緒に育ち、曽祖父母の時代には蓮とるなのように揃いの衣装を着て社内のイベントを盛り上げたものだといいます 「ま、俺たちは美しいですから、眼福だと思われているうちが華じゃないですかねぇ」「お前…」小さな会社が努力だけでは続かない…、小規模とはいえ、過去に多くの役員や従業員が社長と意見が合わずに去っていったことを、るなは聞かされて育っています 秘書の月天家も、悪口嫌がらせと縁が切れません 揃いの服を着て、かわいいお嬢さんだと思われて…、蓮の父親は、こうすることで俺たちを守りつつ、仕事の様子を見せてくれていると、るなは思っています 完全に大人になっちゃったら、どんな格好したって経営側の人間として容赦なく叩かれるんだろうなぁ… 「来春からは俺も高校生です。そしたら学業に集中していいって言われてるじゃないですか。今週までの辛抱ですよ」それに俺、なんだかんだ言って、この衣装に愛着ありますよ? るなは自らの胸をぽんぽんと叩いて蓮に笑いかけました 梵も、自分よりよほど大人なこの妹分にいつも支えられてきたことは承知しているつもりです 外での自分の態度では、かわいく見えるものも見えないというのもよくわかっています 梵はパパもママも大好きですが、用意された服をお人形のように着せられて、よそ様に媚びて何日も動かねばならないこの習慣はなんとかならないものか、そもそも跡など継ぎたくないのだけれど、そんな気持ちを飲み込んで、るなに寄りかかりました「そうだな。着いたら教えてくれ」 「…承知。これ使ってください」化粧と髪型が崩れないように、首がしっかり固定される枕を渡されました るなは、まったくこのお姉さんは子どもの頃からなぜこんなに偉そうなんだろうと溜息をつきました でも、不思議と嫌いにはなりませんでした 幼い頃は面倒をよく見てもらっていて、自分が頼っていたのです 新年を迎えるたびに、2年という歳の差が埋まっていくことを実感し、嬉しく思うるなでした +++ 「あけまして、おめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!」 小さなアーシャは、両親と姉ちゃんに元気な声でご挨拶しました 昼前にゆっくり起きて、お年玉をもらって、おせちを食べて、お友達からの年賀状を読んで、あとはお外で父ちゃん・姉ちゃんと凧揚げです 「走れ!」ビニル袋に油性ペンで大きくねずみの絵を描いて、父ちゃん・姉ちゃんと一緒に作った凧です 「アーシャは絵がうまいなぁ! 生きてるみたいだぞ」「えへへ」いい風の吹いている元日でした ねずみは勢いよく空を駆けていきます 来週の学校の凧揚げ大会でも高く飛ぶといいなと思いました PR |
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