2024 11,25 17:33 |
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2012 10,26 23:00 |
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ラボラトリに戻ると、カーテンの隙間から月明かりが差し込むのみの暗い部屋の隅、ベッドの脇に小さな物体が置かれているのが白く浮かんで見えた。見覚えのないそれを不機嫌に蹴り飛ばし、ベッドにうずくまって嗚咽を漏らす。込み上げてくる様々な感情に耐えるように肩を震わせながら、内鍵を掛けてしまえば誰にも侵されることのない自室で独り、ルークは2人でパズルに挑戦してきた先ほどの過程を回想していた。 ――あんなに、楽しかったのに。僕が新しい世界に踏み出そうとすると、必ず誰かが邪魔をする。今夜だって。せっかくカイトが誘ってくれたのに、カイトともっと話したかったのに……カイト、カイト…… 助けを求めるかのように、心の中で彼の名を何度も呼び掛けていると、内線のブザーが鳴り始めた。先ほどのこともあって、無視を決め込むわけにはいかない。ルークはのろのろと、明滅する通話ボタンに手を伸ばした。 「ルーク様。明日の朝5:50までに、そちらに必要なお荷物を詰めておいてくださいね」 「えっ?」 唐突な話し始めに、思わず聞き返す。 「ベッドサイドに置かせていただいたでしょう」 蹴飛ばされたそれは、6歳の子どもが背負うのに相応しい、本当に小さなザックだった。具体的には通常サイズのメロンが2つは入らないだろうという程度の容積だ。これに何を詰めるというのか。 「あぁ、ただし、お洋服以外のものを。下着類も含め、着るものはあちらで新しくご用意いたしますので」 「待って、いきなり。……、どういうこと、」 不親切な説明に混乱しながら、詳細を問うた。その間に鼻をかむため、枕元のボックスからティッシュを数枚摘まみ取る。 「このラボラトリでは満足に行えなかった、大規模建造物を用いたパズル製作に、明日より新しい施設で取り組んでいただきます」 「そんな……」 ――また、人を、これまでよりも、もっと沢山の、人を…… 「何か問題でも?」 「いえ、……」 ここで意見する権利などないことは明らかだった。使ったティッシュをダストボックスの中に入れると、そこに捨てられ重なり山になったティッシュたちが人間に見えた。ルークは反射的に両手で目を覆い、ベッドに仰向けて倒れこんだが、残念ながらそれによって通話口の相手の声まで遮断できるということにはならない。 「こちらには戻りませんので、忘れ物のないようにしてくださいね。特に、パズル製作に必要な道具などは。……それでは、よい夢を」 「……、はい……」 ――それじゃあ、カイトとも、会えなくなる…… 物心ついて、ルークがこの施設に引き取られてから、事態はどんどん悪くなっていく。けれども、所詮6歳の子どもに、何故こうなったかなどという理由が分かるはずがなかった。 その晩、寝付くことも忘れて、ザックに入れるものを吟味した。 翌朝、日が昇ると同時にルークは「転校」し、カイトとは二度と会えなくなった。 □ プログラムの再構成。 その主眼とするところは、ありとあらゆる感情の制御である。激しい情動だけではない。その抑制の対象は、日常的に抱く、ほんのちょっとした――例えば、晴天で気分が良いとか、石鹸から甘い香りが漂ってきて嬉しいといった――「気持ち」から、場合によってはその人間の精神的支柱となりうる「信念」にまで及んだ。人を殺すためのパズル製作を要求される日々も辛かったが、当時のルークに、再構成プログラムも相当にこたえた。なぜならば、これを甘んじて受け入れれば、殺人パズルを作ることについての嫌悪感すら抱けなくなってしまうのだから。 ――パズルは、裏切らない。裏切るのはいつも、それを作った人間。 自分のせいではないにしろ、いつしかその「人間」の内に含まれるようになってしまうのだろうかという恐怖と嫌悪感が、ルークを苛んだ。どうにかして、このプログラムからの抜け道を探し出そうと、新しい施設で小さな思考を巡らせた。 しかしルークは、問題作成能力を鍛えられてばかりの育ち方をしたためか、問題解決能力には乏しいという自覚が当時からそれなりにあった。同じ年頃の唯一の友人だったカイトとは気が合っていて、似た者同士と思い込みたくなることもあったが、実際にはそうでないことは重々承知していた。2人の持つ能力は正反対のものであり、ルークは自由なカイトの発想に少しも憧憬を抱かなかったといえば、嘘になる。このような状況に置かれたら、カイトならばどれほど鮮やかな解法を編み出すのだろうかと、いつもであればベッドに潜り幸せな溜息をつきながら、彼の力強く美しい試行錯誤の過程を何度も思い浮かべてゆっくりと過ごすのだが、今回ばかりはそうはいかなかった。 ――僕も、カイトみたいに……いいや、違う。僕は僕だ。だけど、そうでもしないと僕はもうじき、パズルと、カイトと、あの青年を、裏切ることになる。急がないと、早く、しないと、……、……。 焦燥に駆られながらも思考は堂々巡りで、具体的に何をどうすればよいのかが全く思いつかない。頭を抱えて唸っているうちに、ルークは眠りに落ちていった。 □ ――いや、慌てることはない。パズルを作る時間など心配せずとも充分にあるのだ。なぜならば、先々週の僕のパズル製作の平均所要時間は1題につき12分08秒程度、先週の平均時間は10分53秒程度……、その差75秒、過去1年分のデータより、週あたり5~10秒程度の記録の伸びだったはずが、このひと月で急激に加速している。そのため、一日中パズルを作って過ごす僕が慌てる必要などどこにもない…… 何も、これは純粋に能力の向上を意味する数値ではなかった。この劇的な「成長」に最も大きく寄与した要因は、躊躇いの消失だ。日に日に薄まっていく感情に危惧の念を覚えながら、また、その感覚さえ徐々に薄れていく中で、6歳の幼い子どもは、綿密に練られたプログラムの平坦すぎる世界へ、じわじわと飲み込まれていった。 けれども、時間的記録の更新には限界がある。パズルを作る際には文字通り、「作る」必要があり、そのためには図面に書き起こすための時間がかかるからだ。腕の筋肉、筆記具、紙。物理的な制約を超えることができなくなるまで所要時間が縮まると、今度は質の向上を要求されるようになった。 パズルの質とは、本来その発想の美しさに重きを置かれ評価を下されるべきだが、この施設で製作を要求されるパズルは「実在」して初めてその価値が決まる。幾つかのパズルの図面を書き溜めると、その中から実用化しやすい、なるべく丈夫な案を1つ選び、構造物の材質の吟味や各パーツの補強、間隙の微調整などを子細に検討した。時には、立体として作り上げることで初めて確認できる重力の負担や採光の不充分、パーツの滑りづらさなどが見つかり、そのような場合、内容に変更を加えることも多々あった。 「……。A6-2のパーツを破棄。代わりにF3-8のパーツを、そこへ移動させてください」 「かしこまりました。しかし、何故ですか、ルーク様」 また、ルークの作るパズルは、人間が解くためのものであることが前提だ。そのため、パズルの良質さの確認には、成人のソルヴァーが使用され、製作者であるルークは必ず見やすい位置から立ち会うことが義務付けられた。個々のソルヴァーの性質の違いによりパズルの品質の測定結果に誤差が生じないよう、もちろん事前にソルヴァーの選定が厳密に行われている。1つのパズルに、最低5回の予試験(指定の手順に従ってソルヴァーに動いてもらう)と10回の本試験(ソルヴァーの自由な手順で解答してもらう)が行われ、つまり15名程度のソルヴァーが、ルークがパズルを作るたび犠牲になっていった。正解すれば出口は開かれるのだから、必ず犠牲にならなくてはいけないわけではないが、ルークのパズルの場合は、結果としてすべてのソルヴァーが犠牲になっていった、そういうことだ。 「そのほうが、美しくなるからです。それに……」 「美しい」とは、解答の過程に無駄がなく、或いは、あったとしてもそれは計算しつくされた芸術性に則ったものである、という意味合いの表現だ。本試験の流れを追うと、意図せず解答者を惑わず工程が出現してしまう場合がある。しかし、構造物のパズルはできるだけ、人間の思考回路に馴染む構造を持つことが望ましい。そのような場合にも、変更を指示した。ルークは、パズル製作の過程をこの上なく愛していたが、同時に解答者の思考の過程をゆっくり眺める時間も好きだった。 「それに?」 つまり、品質試験の目的は2つあり、1つは設備に摩耗や故障が生じにくい構造であるかどうかの確認、もう1つはギヴァーが凄惨な現場を見慣れることだった。ルークはこの頃、既に生来の性質を失い、代わりに新しい生活習慣による新たな性質を、――愚者のパズルに「美しい」解法で挑む敗北者の行く末について、わずかな熱と、形容しがたい奇妙な高揚感などを抱いてしまう性質を――、獲得しはじめていた。 ――あぁ、カイトならどんな過程を経て、どんな表情を浮かべながら、どんな身のこなしの軽さでこのポイントを突破するかな。それともカイトは…… 「……いえ、なんでもありません」 思わず緩みそうになった頬を引き締め、再び立ち会いの品質検査の確認に専念した。 □ あれから年月が流れ、ルークはギヴァーとしての腕を着実に上げていった。年齢の、あるいは階級の上昇に伴ってか、最近では少年の腕を乱暴に掴みあげて無礼な態度で接する監視員たちは周囲から居なくなり、ようやく自分の置かれた環境についての説明を受けた。 ここはPuzzle Of Godという世界規模の組織であること。 POGの使命は2つあり、1つは、人々の財を護り、または与えるための大規模パズル製作に励むこと、もう1つは人類最高の財の解放に必要な、祝福された頭脳を持つ人間の能力開発を行うこと。 POGの管理するパズルには2種類あり、前者の目的にかなうものを賢者のパズル、後者のものを愚者のパズルと呼ぶこと。 ルークの担当するパズルは専ら愚者のパズルであること。 そして、ルークは愚者のパズルの製作者の中で現在最も期待されている人材の一人であること。 年端のいかないうちに両親から離れてPOGで生活することになったのは、その才能を見込んでの早期教育のためであったことなど。 未だに英国支部からその活動の場を広げることはなかったが、こうして、以前に比べ幾分か穏やかな製作活動に精を出していた頃だった。その日も辞令が交付されるとのことで、ルークは独り、ピタゴラス伯爵のもとを訪れていた。 「ルーク・盤城・クロスフィールド。お前に新たな任を与える。今後も人類の未来のために、一流のギヴァーとしての活躍を期待している」 「ありがとうございます」 小さな身体で片膝をつき、頭を垂れた姿勢で伯爵の辞令の続きを聞いた。 「それに伴い、担当するソルヴァーの年齢が今までお前の専門であった成人から、お前と同じくらいの歳の子どもに代わるがよろしいか」 「はい……、ッ?!」 ルークはとっさに顔を上げた。伯爵の有難いお言葉に刃向かう意図は一切ないが、1つだけ気になることがあったからだ。通常ならばお咎めを受けてしまいそうな落ち着きのない態度が許されるのは、彼がまだ子どもだからではなく、信頼されているからに他ならなかった。 「どうしたかね」 「それは……英国在住の子どもでしょうか」 そこには相反する想いがあった。 カイトはきっと、英国クロスフィールド学院の制服に身を包み、あの頃と何も変わらぬまま、パズルの解答に励んでいることだろう。それなりの待遇が保障された生活を送る今、自由な彼だけを羨み懐かしむ気持ちは、昔に比べれば多少は薄れていた。しかし、正式にソルヴァーとなった彼と会えるかもしれないならば話は別だ。少しの期待と、そして少しの――ルークがかつて作製したパズルに挑んだソルヴァーで生還した者が一人もいないという事実に基づいた――危惧を抱き、ルークは伯爵の口から返答が紡がれるのを待った。 「心配することはない。大門カイトのことだろう」 「は……、」 白い毛髪に覆われた顔から表情を窺い知ることは難しかったが、幾分か声を和らげた伯爵は、階下の少年に声を掛ける。ルークは安堵し、気の抜けたような声を漏らした。 「彼なら既に……、」 ――僕の過去を考慮したうえで、もしかしてカイトをPOGに招聘してくださったのかな。過去に、ソルヴァーでありながらPOGに籍を置いた人物がいるって、誰かが言っていたっけ。確か、名前は……、真方ジン。どんな人かは、知らないけれど。名前から推測するに、カイトと同じ日本人なんだろう。きっと、カイトと同じくらい、素敵なソルヴァーだったんだろうなぁ。だけど、彼は都合でPOGを離れて、今はどこにいるか分からないんだって。勿体ないよね、どんな事情であれ、才能を持ちながらそれを活かすことをやめてしまうなんて。あぁ、残念だなぁ。今も彼がここに残っていれば、僕と面白い対戦ができたかもしれなかったのに。……といっても、それはもう昨日までの話。今日から僕は子どものソルヴァーを対象に愚者のパズルを作るのだから、彼と戦う機会はこの先訪れることはないか、あったとしても当分先の話だろうね。ところで、僕の実績は、通常のソルヴァーにとっては致死的だ。だけど、カイトならきっと、大丈夫。僕のパズルも難なくクリアしてくれる。僕が思いつかないような、素敵な解法で、僕の憧れる、素敵な力強さで、僕の触れたことのない、素敵な温かさで、僕の見惚れる、素敵な美しさで、僕が決して真似することのできない、素敵な笑顔で。……カイト、僕、パズル作るの上手くなったよ。また、かっこいいパズルだって、褒めてくれるかな。カイトもきっと、解答の腕を上げているだろうね。カイト、会えるのかな。だとしたら、本当に久しぶりだね。とても嬉しいよ。一体、何年ぶりに……、 「……他界しておる」 □ ルークは先のピタゴラス伯爵の言葉を、何度も反芻していた。 ――「大門カイトが生きていると、お前は彼を気にしてギヴァー行為に集中できなくなるであろう。ギヴァーはソルヴァーを選ぶことができない。自分の手で友人を殺めてしまう心配が無くなって、良かったではないか。これで、恐れることは何もあるまい。今後も気兼ねなくギヴァー活動を続けたまえ」「……はい……」…… 「なんで……、なん、で、……うう、ッ、ァアァアあああああ!!!」 ――再構成プログラムなんて、何の役にも立たないじゃないか!!! 感情を制御するための特別プログラム。喜怒哀楽の消失は、初めのうちこそ恐怖であったが、慣れてしまえばむしろ利便性を感じる機会のほうが多かった。情動に左右されなくなった少年は、環境や前後の文脈に関わらずパズル製作に集中できるようになった。その結果、記録が伸び、階級が上がり、待遇が改善された。初めの頃が一番辛かったのだと、後になってから知った……つもりになっていた。けれども、そうではなかった。 ルークはその晩、訳が分からなくなるくらいに泣いた。喉が枯れるほど叫び声を上げ、白い頭をかきむしり、枕に拳を叩きこみ、手首が痛くなってもしばらくその動作をやめることができなかった。鼻をすすりながら、涙と暴れたせいでぐちゃぐちゃになったシーツをタオルで拭き、ベッドに大人しく腰掛け直してもなお、心臓が早鐘を打っていた。 ――以前にも、こんな夜があった気がする。そうだ。あの晩も、カイトと引き離されて泣いていたんだっけ。あれが、カイトとの最後の思い出だったんだ…… ふと記憶が呼び覚まされて、ベッドから降り、デスクまで歩いていく。上から3段目の引き出しを開け、底板を外した。板の裏面がスライドパズルになっており、震える指先でそれを迷いなく解くと、一辺に隙間が生じ、封筒が現れる。中には数枚の写真が収められていた。ルークは四辺に指先を掛け、その束をそっと、捲っていく。 ――カイトと、僕。 特に気に入りの写真は、カイトがルークの肩に腕を回し、もう一方の手でピースをしながら、悪戯そうに笑っているというものだった。ルークはそのカイトの頬を、視線だけで優しく撫でた。表面に汚れが付かないように。 「カイト……」 あの晩、白いザックに詰めたのは結局写真だけだった。カイトとの思い出の中で、唯一、形に残るもの。内線を寄越した監視員の意図としては、日誌などを詰めるようにということだったのだろうが、パズルに関する記憶はルークにとって「物体」として携帯するまでもなく細部まで脳内に刻み込んでおくことが可能だったため、その必要はなかった。実際には再度図面に書き起こさないと施工者に指示が出せないため、あえてラボラトリに残してきたその行動を、時間の無駄遣いだと叱られはしたのだが。 「僕の、カイト、……ッ」 この写真を撮影した青年も、パズルを愛していた。パズルを愛し、カイトとルークに人生哲学を語り、時折カメラを構えては、2人の姿を撮っていた。これは彼から手渡された焼き増し分だ。青年は特にカイトの面倒を見ていたような印象を抱かざるを得なかったが、それでも2人をできる限り平等に扱ってくれていた雰囲気はルークにも伝わった。 彼は旅から旅への生活をしていて、当時は偶然英国に立ち寄っただけだと言っていた。あの後、ルークが転校してからの消息は把握していないが、カイトの死はきっと、彼の耳にも届いていることだろう。葬儀には、参列できたのだろうか。 「ふ……、う、ッ……」 余計なことを想像すればするほど、止まったはずの涙は再び溢れ出し、ルークの肩は震える。 ――カイトには、もう、会えない…… 嬉しい。これでもう、カイトがあの青年に取られることはなくなった。そう思うと同時に、全身を突き抜けるような未知の感覚に襲われる。 「ッ、あ……!!」 ――何、これ、……どうしよう…… 突然、膝の力が入らなくなり、少年はその場にへたり込んだ。 「ン、動か、な……」 ――カイトが、永遠になったと、 呼吸がままならない。視界が歪み、回転を始めた。 「はぁ……、ッは、あ……」 ――考えるだけで、僕の、 奇妙な震えは止まらず、背筋をゾクゾクとしたものが立ち昇っていく。声帯からは意図せず声が漏れ出る。 「ン……、ン、カイトォ……」 ――身体が、堪らなく、 力の抜けた身体を芋虫のように引きずり、時間をかけてベッドの脇まで辿り着く。大きく震戦する腕を、指先を、必死に伸ばし、力を込めてシーツを握り締めた。 ――熱い…… 「ふう、……ッは……」 肩で呼吸を継ぎながらようやく上半身を起こすと、ベッドへ俯せに倒れ込んだ。 初めての事態に混乱するも、少年は冷静に対処すべく、華奢な身体を自らきつく抱き締め、枕に額をごしごしと擦り付けながら、熱と眩暈が治まる時を待った。 □ 人間の脳から人工的にすべての感情を消去することなど、できるはずがない。できたように見えても、あくまでも「見えて」いるだけであって、実際には失った正常な感情を埋め合わせるために何らかの内面的な異常を獲得してしまう。そうでなければ、生き続けることができない。少なくとも、この少年の所属していたセクションではそれが法則だった。 ■next■ PR |
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